2008年4月21日月曜日

穀雨(4月20日)

通勤の電車に乗る。少し遅めの時間だ。日差しもあって車内は暖かい。周囲では乗客が何人も居眠りしている。こちらもぼんやり眺めている▼すると車内の電光掲示が点灯した。「ただいま平和」。おや、本当にのどかだけれど、そんな表示ってあるのかな。見回したら、JR千歳線の平和駅(札幌)に着いたのだった。ともあれ春、「ただいま平和」の表示が似合う▼こんな時季には、雨が降っても平和だ。一年をほぼ半月ごとに区切った、季節を表す言葉がある。二十四節気という。冬至や立春などだ。きょうは、その中の穀雨(こくう)である。春雨が降って、さまざまな穀物を潤す時季だ▼春を表す言葉は味わい深い。春分から半月たつと清明(せいめい)となる。天も地も、清々(すがすが)しく明るい。それから半月で穀雨が来る。北海道はまだ雨が冷たい。春の歩みが遅い道内の今は、清明と穀雨を同時に迎えているような印象である▼このころに「田鼠(でんそ)化して鶉(うずら)となる」と呼ばれる一時期がある。田鼠とはモグラのことだ。陽気に導かれてモグラがウズラになる、中国のことわざから来た。あるはずはないが、暗い土中を出て空に向かいたい気分か。一茶は〈飛び鶉/鼠(ねずみ)の昔忘るゝな〉と詠んだ▼これから半月たてば立夏がやって来る。雪が降る年もあるが、暦の上ではもう夏になるから、のんびりとばかりもしていられない。それでもやはり春眠は気持ちがよい。

(北海道新聞より引用)

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